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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)474号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人帯野喜一郎の上告理由について。

第一点は、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

第二点は、原判決は訴の変更の許否に関する民事訴訟法の解釈適用を誤つた違法があるというけれども、記録によれば、本訴請求において、当初被上告人は、昭和二四年一二月七日上告人から金五万円の返還を受けた際の当事者間の合意により、右金員を本件前渡金(一〇万円)中三万円と別途貸金二万円に充当したものとして右前渡金の残額を七万円と主張したのを、原審においては、上告人から右五万円の返還を受けた際の当事者間の合意により、右金員を右前渡金中に充当したものとしてその残額五万円及び別途貸金二万円の合計七万円と主張を変更したものであることを認めることができる。すなわち被上告人の本訴請求は、右前渡金の一部返還とこれに伴う合意の際に、被上告人と上告人間において合意清算を要する関係にあつた金銭上の債権に基くものであり、被上告人は最初その債権を前渡金残金とし、後これを前渡金残金及び貸金と改めたものに過ぎず、その間請求の基礎については変更がないのであるから、これと同趣旨のもとに訴の変更を許容した原判決には所論のごとき違法はない。論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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